2022年2月4日IPSJ/ITSCJ主催『ISO/IEC 23761: 2021, EPUB電子書籍のアクセシビリティのJIS化について』講演会報告
講演会情報
タイトル:「ISO/IEC 23761: 2021, EPUB電子書籍のアクセシビリティのJIS化について」
主催:一般社団法人 情報処理学会, 一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会
2021年2月に、日本の国際提案を受けて、EPUB電子書籍がどのようなアクセシブルな仕様を備えているかを明示するため、ISO/IEC 23761「電子出版— EPUB出版物の適合性及び発見可能性の要求事項」が発行された。
このISO/IEC規格を、日本産業規格・JIS規格として日本規格協会に申出を行うために、2021年7月にJIS原案作成委員会が発足し、一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会においてJIS化の作業が進められている。
本セミナーでは、日本DAISYコンソーシアム(JDC)も協賛として携わり、JIS規格を実際に活用するための講演会を行った。
主なプログラム
- EPUBアクセシビリティJIS原案概要
- アクセシビリティ検証ツールACE
- EPUBアクセシビリティの認証機関について
- プリントディスアビリティにも対処できるデジタル時代の日本語レイアウト
- W3Cにおけるルビの標準化
- EPUBアクセシビリティJISにおける日本独自附属書とW3Cでの提案予定
詳細:SC 34 ISO/IEC ISO/IEC 23761: 2021, EPUB電子書籍のアクセシビリティのJIS化について
講演会の報告
EPUBアクセシビリティJIS原案作成委員会委員長の村田氏(JDC技術委員会委員長)、EPUBアクセシビリティ検証ツールAce by DAISYの日本語化に関わる伊藤氏、慶應W3Cで技術的な仕様策定やそのサポートをしている下農氏、長年DAISY/EPUBアクセシビリティなど情報支援技術の開発と普及活動を行ってきた河村氏(JDC運営委員会委員長)、DAISY/EPUBの再生ツールを開発している工藤氏が登壇し、EPUB電子書籍のアクセシビリティのJIS化をテーマに、講演を行った。
その具体的な内容としては、EPUBを提供するためのサイトにおけるアクセシビリティや、JIS規格と日本語固有の事情を考慮した付属文書に基づくEPUBを提供するための具体例、日本語におけるEPUB製作で重要になる課題、LDセンターに通う学習に困難を抱える子供を対象に行った実証研究についての説明、アクセシブルなEPUBを検証するツールの仕様や結果レポートの重要な箇所等の見方とメタデータの編集方法の説明、イタリアのLIAでの事例を参考にツールのみでは判定できないものを人がアクセシブルかを確認し、EPUB認証を付けるための認証機関を設置する際の課題などの話があった。
また、質疑応答では、EPUBコンテンツにJIS規格であることの認証を付けるための認証機関をどのように設立するか、法整備の有無、今までDAISYを使ってきた人たちも取り残されることなく、アクセシブルな書籍として活用されるのかなどについて、参加者を含めた出版社や、DAISY/EPUB製作者団体、支援者などさまざまな立場の方との意見交換が行われた。
JIS規格化、また、認証機関の立ち上げに向け、提供システムがアクセシブルであることの担保や、ユーザ側へどのようなアクセシブルなEPUBデータであるかを示すことについて、アクセシブルでないものをアクセシブルとして提供された場合、どのようにして、著作権法第37条に基づいたアクセシビリティを確保するかを考える必要があります。課題はありつつ、このようなセミナーを通して、さまざまな立場の方々の意見を取り入れ、これからも、さまざまなニーズを知り、持続可能で中立的な認証機関の設立に向け進んでいくことが期待される。