当事者の立場からディスレクシアとは
講演者
神山 忠(日本DAISYコンソーシアム個人会員、ディスレクシア当事者)
講演内容
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ディスレクシアという言葉は浸透してませんが、学習障害は教育現場を中心に広く知られてきたと思います。
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学習障害の中にディスレクシアが位置しています。学習障害は読む、書く、計算するなど、何かに極端な苦手感ある特性です。
そのなかでも、読むに特化して困難さがある状態をディスレクシアといい、映画界など、有名人もカミングアウトを何人かされています。
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私が印刷された文字をどのように見えるかというと、このように見えます。
白い紙に黒いものがいっぱいあるな、という感じです。向きも分かりませんし、文字も分からない。でも、工夫することで読めてきます。アラビア文字の元になったものらしいですが、日本語でもこのようにしか見えません。
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これを見て、読めた方、それほど多くないと思います。こんな感じで墨字の文章も見えます。いらない情報を隠して白を見る、そんな工夫で読めてきます。
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日本語の文章でもこのようにしか見えないので、黒に目をこらせば見えるはずと一生懸命、黒に目をこらすと、何とか文字らしいものが並んでいると分かりますが、縦書きか横書きかも判断しづらい。
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上下左右を隠すことで注目すべきところが見えて、やっと拾い読みができる、という感じです。
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多くの情報が提示されると非常に混乱してしまうので、情報量のコントロールが必要となります。
そこで、こういった定規で必要でない情報を隠すため、リーディングトラッカー的に使う定規は常に持ち合わせるようにしています。
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私の墨字認識を点字に例えると、どういうふうになるか。
紙の向きが混ざって分からない、両面から打たれて重なってる状態で読みなさいと言われてるのと同じ感覚かなとか、凹凸が分かりにくい薄い紙に打たれた点字を読みなさいと言われている、そんな感覚と似ているのかなと相像してみました。
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書体によっても、読みにくさがあります。
これは明朝体ですが、太さの違いがあるために、なかなか文字として認識しづらいです。
三角形が端っこに付いていて、ひっかかりができて、どうしても地図のように見えてしまう。
この交差点、東西が細くて南北が太いんだ、大通りなんだなと思ってしまう訳です。
そのため、丸ゴシックとか、メイリオの書体のほうが文字として認識しやすいです。
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これを見て、文字として読める人は少ないのかなと思います。
これも文字なのです。ただ、明朝体の逆パターンにしてみました。 横を太くて縦が細い、三角形を下にしてみた。たったそれだけで文字としては認識しづらいですよね。
これがゴシック体や丸ゴシックならこうなって、より文字としては認識しやすいです。
つまり、ディスレクシアの人だけ、書体によって読みやすさ、読みにくさが生じるかというと、そういうものではないかなと思います。
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これを点字に例えると、点字ディスプレイの各ドットというか、ピンの形状が、文章によって違う。
つまり、爪楊枝のように尖ったピンが出てきたり、マッチ棒のように四角いピンが出てきたり、そんな違いに、私の書体の違いは例えることができるのかな。
書体によって読みやすさ、読みにくさが生じるのは、点字ディスプレイの形状が文章によって異なる感じかなと思います。
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苦手なことに、縦書きがどうしても読みにくい、読めません、処理できません。
頑張って読もうと思うと、うねったように見えて、気持ち悪くなってしまう感じです。
これだと、行を飛ばして読んだり、乗り物酔いをしている感覚に襲われたりする感覚が分かっていただけると思います。
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日本語の表記は、このように縦書きのぎゅうぎゅう詰めです。
これを読んで、意味が分かった方、それほど多くないと思います。T.h.i.s.i.s.a.p.e.n.と何度も拾い読みをしてもなかなか難しいです。横書きの分かち書きだと、「This is a pen」と分かります。そこで、行間や文字間の調整ができると助かります。
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小学校時代によくあったのは、ひらがなで支援、提示されることは困りました。
「あるみかんのうえにあるみかんをもっていってね」書かれても、
「アルミ缶の上にあるみかんを持っていってね」なのか、
「アルミ缶の上にアルミ缶を持っていってね」なのかが分からない。
そんな困った状態になります。
字面で意味をくみ取るので、この形は果物、こちらは缶だと分かるので、混ぜ書きのほうが助かります。
でも、勉強のできない子にはひらがなで支援するというので、ひらがなばかり提示されることも多々あり、困りました。
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ルビも、どこまでが字で、どこからがルビなのか。
ふりがなを打ってもらえたかどうか、竹冠の仲間なんだろうか、と混乱することにつながってしまいます。
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色を変えるか、ルビと親文字の間をある程度離すなど、そういった調整、配慮がなされると助かります。
慣れてきたらルビを消すといった調整もできると、すっきりして、集中して読みやすくなるので、そんな機能も非常に助かります。
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黄色でハイライトされると、うねったように見えていても目で追いやすくなります。
色は黄色限定ではないですが、ハイライトされて読み上げられるのは、助かる機能です。
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私が、私らしい読書で、どんな形?と言われたら、まず何ページと言われてすぐに開ける、ナビゲーション機能があると助かります。
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そして、縦書きが苦手なので、横書きに変更できる調整機能も助かります。
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縦書きでもフォントサイズの調整があれば、少しは読みやすくなるので、それも必要な機能です。
行間、文字間、分かち書きの機能もあると非常に分かりやすいので、これなら縦書きでも処理しやすいです。
ルビに関しても、色を変えてふりがなが打たれるとか。
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何年生の履修の漢字からルビを打つ、1、2年生は打たないといった変更ができると、自分らしい読書ができると思います。
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一番、私が助かる書式は、こんな感じになります。
ナビゲーション機能があって、自分の見やすいように、縦組を横組にして、フォントサイズ、行間、文字間を調整して、ルビを振って、ハイライトさせられる。こんな表示だと、私らしい読書になっていきます。
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重なりますが、縦組・横組の変更、書体の変更、ナビゲーション機能、しおりや検索機能に対応しているのも助かります。
読み上げ機能、それがハイライトとシンクロしていると助かります。ルビと親文字の関係、調整機能もあると助かります。
よくディスレクシアの人たちは、音声読み上げさえあればいいと言われることもありますが、それは、私にとってはラジオを聞いているような感覚で、読書をしている感覚ではありません。
なかなか読み上げられるだけでは、深く理解したり味わって読書することにはならないので、私には、こうした機能があると助かると思います。
同じディスレクシアといっても、様々な特性があります。これは、私の一例として、聞いてご理解いただければと思います。
それでは、小澤さんにバトンを渡します。ご清聴ありがとうございました。