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DAISYとEPUBで日本の災害に立ち向かう

DAISYコンソーシアム理事
河村宏 東京 

出典: DAISY Consortium http://www.daisy.org/
The DAISY Consortium's Monthly Newsletter - January 2012
Tackling the Disasters in Japan with DAISY & EPUB
http://www.daisy.org/planet-2012-01#a1

アクセシブルな情報は不可欠

2012年1月28日、30分足らずの間に4回にわたり地震が発生し、富士山周辺に住む数千万人の間に不安が広がった。その後、日本の東太平洋岸では、12時間でさらに6回の地震が発生した。研究者の中には、2011年3月以降の一連の地震によって、富士山のマグマだまりが刺激を受けたと言う者もいるが、今後の富士山爆発あるいは巨大地震発生を裏付ける正確な科学的証拠について語れる者はいない。

2011年3月11日、数時間のうちに2万人の命と50万件の家屋が巨大地震と津波によって失われた。3月11日に命を落とした犠牲者の56%が65歳以上だった。65歳以上の死亡率は平均の2倍で、障害者として登録されていた人の死亡率も平均の2倍だった。これは、災害発生時には高齢者と障害者の命を救う努力をしなければならないことを意味している。

福島第一原子力発電所は激しく損壊し、史上最悪の放射性物質漏えいを引き起こした。避難計画は無く、原子力発電所爆発後、避難時の混乱が原因で、双葉病院では高齢患者50人が亡くなった。亡くなった患者は、避難用救急車などの医学的な支援を必要としていたが、一般のバスで数時間かけ、必要な医療を受けられないまま搬送されたのである。避難命令が出された混乱の中、病院に取り残された患者もいた。爆発した原子炉から5キロメートル圏内の病院に入院していた、300人を超える重度認知症患者やその他の心理社会的障害を抱えている患者の避難計画が存在しなかったという事実は、驚くべきことである。

このような悲劇的な災害にもかかわらず、3.11以降、世界中の友人達や仲間達に励まされ、助けられながら、地震と津波、そして放射能から逃れた人々を支援するために、私達は必死の努力を続けてきた。同時に、昨年3月の震災から得た教訓に基づき、余震にも備えている。日本の東太平洋岸における地震発生件数は、3.11以前の5倍に増加した。津波の被害を受けた地域は、高さ10メートルもの防波堤など、津波防御システムを失ってしまった。生き残ったが家を失った人々にとって、十分な防御と避難の戦略を持たずに、津波に襲われた同じ場所に戻り、再び定住することは危険が大きすぎる。私達はこの難題を克服するために英知を結集しなければならない。津波の被害を受けた地域の再建には何年もかかるだろう。

核の問題への取り組みは最も難しい。さらなる爆発を防ぐために、3つの「炉心溶融」した原子炉(1、2、3号機)と、燃料プール内の核燃料棒計約1万本を冷却し続けなければならず、すべての原子炉と高濃度汚染物質を数百年間完全に密閉しなければならないのだ。報告によれば、この任務を終えるまでには数十年かかる可能性があり、しかも、よほど幸運でない限り、任務終了までに福島原子力発電所が大地震にも大津波にも襲われずに済むことはない。

原子力発電所の外に拡散された放射性物質は何年間もとどまり続け、地球環境に損害を与える可能性があるため、世界の今の世代と未来の世代の両方に対して、核災害に対処する責任を自分達が負っていることを、日本の人々ははっきりと理解している。まず、漏えいを止め、その後、環境浄化を進めていかなければならない。だが残念ながら、漏えいを止めることにはまだ成功していない。

私達は被災者の支援、災害で破壊された地域社会の再建の援助とともに、将来の自然災害に備え、原子炉のメルトダウンと闘うことに、総力を結集して取り組んでいる。

日本DAISYコンソーシアムの役割

日本DAISYコンソーシアムの役割は、すべての人のために、前述のプロセスに必要なあらゆる知識と情報の、DAISYやEPUBなどのアクセシブルなフォーマットによる共有を促進することだと、私は信じている。DAISYコンソーシアムを通じたボランティアによる活動や世界各地からの寄付に支えられ、日本DAISYコンソーシアムは、マルチメディアDAISYフォーマットによる重要な情報資料20タイトルを、 ウェブサイト上で配信してきた。このイニシアティブは今後も続けられ、DAISY版の欧州放射線リスク委員会(ECRR)2010年勧告、地震に関する最新の基礎知識、被災者向けハンドブックが制作される。

謝辞

最後に、DAISYコンソーシアム会員の皆様、理事会及びスタッフチームの皆様に対し、DAISYコンソーシアム会長としての4年間の任期中に賜った素晴らしいご支援のお礼を申し上げたい。皆様のこの上ないご尽力とご助言により、それは貴重な忘れがたい経験となった。

2012年1月1日付で会長職は、私の親友であり同僚であるスティーブン・キング(Stephen King)に引き継がれたが、今後も数年間はDAISY理事会にとどまり、同僚理事の皆様とともに新会長を支えていくことを、大いに楽しみにしている。